研究業績:基礎研究部門・研究室1

原著論文

  • Repeated folding stress-induced morphological changes in the dermal equivalent.
    Skin Res Technol 20:399-408, 2014.
    Arai KY, Sugimoto M, Ito K, Ogura Y, Akutsu N, Amano S, Adachi E, Nishiyama T.
    真皮にかかる機械的ストレスとシワなどの皮膚に生じる形態的な変化との関連を調べるため、収縮コラーゲンゲルと線維芽細胞からなる真皮モデルに反復屈曲刺激を与え、屈曲刺激が真皮ゲルの形状に与える影響を検討した。その結果、反復屈曲刺激により収縮コラーゲンゲルの幅が減少し、コラーゲン線維の配向にも変化が認められた。ゲル幅の減少は線維芽細胞の収縮力増加によるものであり、これにはインテグリンを介したシグナルの他に、血小板由来成長因子(PDGF)の発現増加も関与している可能性が示唆された。
  • Stimulatory effect of fibroblast-derived prostaglandin E2 on keratinocyte stratification in the skin equivalent.
    Wound Repair Regen 22:701-711, 2014.
    Arai KY, Fujioka A, Okamura R, Nishiyama T.
    表皮−真皮相互作用解明の一環として、三次元培養皮膚モデル系におけるプロスタグランジンE2(PGE2)の作用を検討した。三次元培養皮膚モデル系では高濃度のPGE2が分泌されるが、そのためには表皮角化細胞と真皮線維芽細胞の両者が必要であること、PGE2の主要な分泌源は線維芽細胞であること、その分泌は表皮角化細胞由来のIL-1により刺激されること、また、線維芽細胞由来のPGE2が表皮角化細胞の重層化を刺激することなどが明らかとなった。
  • Changes in the expression of epidermal differentiation markers at sites where cultured epithelial autografts were transplanted onto wounds from burn scar excision.
    Int Wound J. 2014 Jul 15. doi: 10.1111/iwj.12323. [Epub ahead of print]
    Kadoya K, Amano S, Nishiyama T, Inomata S, Tsunenaga M, Kumagai N, Matsuzaki K.
    火傷治療で表皮シートを移植後の皮膚状態を合計24人の患者皮膚を用いて、移植後6週間、6ヶ月以内、18ヶ月以内、18ヶ月以上のステージに分けて解析した。生着表皮の免疫組織学的解析から、18ヶ月以内で表皮分化マーカーのフラグリン、トランスグルタミナーゼの発現が6ヶ月以内の患者と比較し有意に改善した。サイトケラチン6は18ヶ月以上、インボルクリンは改善がさらに遅れた。移植部位の分化マーカーの発現は必ずしも同調していないことがわかった。
  • Changes in fibrillin-1 expression, elastin expression and skin surface texture at sites of cultured epithelial autograft transplantation onto wounds from burn scar excision.
    Int Wound J. 2015 Jan 14. doi: 10.1111/iwj.12375. [Epub ahead of print]
    Kadoya K, Amano S, Nishiyama T, Inomata S, Tsunenaga M, Kumagai N, Matsuzaki K.
    火傷治療で表皮シートを移植後の皮膚状態を合計24人の患者の皮膚を使用して、移植後6週間、6ヶ月以内、18ヶ月以内、18ヶ月以上のステージに分けて解析した。皮膚表面形態(肌理)とフィブリリン1、エラスチンの免疫組織学的解析で評価した。6ヶ月以内の患者と比較し、18ヶ月前後の患者の皮膚表面の肌理形成は、有意に改善していた。フィブリリン1は18ヶ月以内で沈着が認められるが、エラスチンは18ヶ月以上経過してようやく検出された。肌理形成とフィブリリン1との関連性が示唆された。

総説

  • 表皮基底膜領域の細胞外マトリックスと加齢および光老化での変化
    日本美容皮膚科学会誌、25(1):22-32, 2015
    松浦‐八谷有宇子、新井浩司、西山敏夫
    表皮基底膜領域の構成成分の解説と構造形成、ならびに自然老化や光老化での細胞外マトリックスの変化を概説し、この領域の構造機能の防御、再生が新たな抗老化ターゲットとなることを考察し、提案した。

学会発表

  • ヒト真皮線維芽細胞のI型コラーゲン産生に及ぼすシリビニンの作用
    第46回日本結合組織学会学術大会、第61回マトリックス研究会大会合同学術集会、名古屋、6月5~7日、2014
    有賀美沙樹、山口翔子、新井 浩司、池島 喬、林 利彦、西山敏夫
    マリアアザミの種子抽出物シリマリンの主要活性成分であるシリビニンは、正常ヒト真皮線維芽細胞のI 型コラーゲンα2鎖の遺伝子発現を促進し、コラーゲン産生も促進することが示された。
  • 三次元培養ヒト皮膚モデルの基底膜形成に及ぼすシリビニンの作用
    第46回日本結合組織学会学術大会、第61回マトリックス研究会大会合同学術集会、名古屋、6月5~7日、2014
    田村裕美子、行方優子、新井 浩司、池島 喬、林 利彦、西山 敏夫
    シリビニンは25μM以下の濃度では、ヒト表皮角化細胞および真皮線維芽細胞への増殖抑制作用はない。この濃度以下のシリビニンを添加し、三次元培養ヒト皮膚モデルでの基底膜形成への影響を検討した。低濃度のシリビニンは、基底膜成分の発現、沈着を増加することから、基底膜形成を促進する可能性が示唆された。
  • 皮下脂肪組織による真皮組織構造の制御機構の解明
    第46回日本結合組織学会学術大会、第61回マトリックス研究会大会合同学術集会、名古屋、6月5~7日、2014
    江連智暢、天野 聡、西山敏夫
    皮膚の構造機能維持に皮下脂肪層がどのような役割を果たすのかを明らかにすることを目的に、真皮線維構造への皮下脂肪の影響を検討した。皮下脂肪の増加により脂肪細胞は肥大化し、細胞内のERK経路を亢進してAP-1を核に移行させることでMMP-9の発現を増加し、これが真皮弾性線維を分解することで皮膚の弾力性低下を誘導することが示された。皮下脂肪組織は、真皮組織の構造と機能を制御する組織であることが明らかとなった。